愛猫との生活が長くなると、傍にいてくれることが当たり前であるかのように錯覚してしまう。我が家には3匹の猫がいるのだが、各々が自由気ままにゴロゴロしている光景が当たり前のものになっていて、誰かひとりでも欠けた日常は想像できない。
命に限りがあることなど分かっているのに、愛猫と一緒に過ごす時間は永遠に続くように思え、「猫が死ぬ」という事実を自分ごととして考えることができなかった。
だが、『ポッケの旅支度』(イシデ電/KADOKAWA)を読み、考えが変わった。死を恐れて別れから目を背けるのではなく、死が訪れることを受け止めた上で、うちの子を愛し抜こうと思えたのだ。
本作はTwitterで多くの共感を呼び、単行本化された実録系猫コミックエッセイ。病気が判明し、残された時間がわずかとなった愛猫ポッケくんとの日々が描かれている。
最愛の猫ポッケが腎臓病に…限りある時間をどう過ごすか?
野良猫にご飯をあげる住人が隣のアパートにいたことから、作者宅では窓を開けていると、時々、猫が侵入。愛猫のポッケくんとピップちゃんも、そうした経緯で出会った。
きょうだいである2匹はノミだらけで猫風邪を患っており、体からは強烈な臭いが…。当時、作者は初めての連載に注力し、荒れた生活をしていたため、2匹を迎えるのは難しいと思っていた。
そんな時、飼い主に立候補したのが、アシスタントをしていた先輩漫画家。だが、上司とも言える人に悪臭を放つ猫を託せないと思い、作者はワクチンや健康診断などを終えてから譲渡することを決意。1カ月間、子猫たちのケアに励んだ。
実は作者、子どもの頃から共に暮らしていた愛猫を2年前に亡くしており、ポッケくんたちをかわいく思うも、愛しはしないと思っていたそう。
ところが、譲渡準備期間中に情がうつり、結局、2匹を自宅に迎えた。猫を迎えると、荒廃していた暮らしは劇的に改善。猫貯金のために禁煙し、飲みに行ってもハシゴせず帰宅するように。2匹は愛情を受けながら、大人になっていった。
そうして、15年弱の月日が流れた、ある日。ポッケくんの歩き方がおかしいことに気づく。便秘が酷くなり、時々、布団の上で便をするようにもなったが、作者は一切責めなかった。