互いに向き合う、黄金色の身体を持つウサギたち。何とも愛らしい光景について伝える写真は、どのようにして生まれたのか。取材しました。=ベーカリー兎座Lepusのツイッター(@inabashiro)
来年の干支として、人気を博すウサギ。そんな動物がモチーフのパンを作る店舗が、とあるツイートを公開し、話題を集めています。あまりにも可愛らしい〝内部抗争〟について、報告する内容です。おかしみたっぷりな投稿の裏側について、取材しました。(withnews編集部・神戸郁人)
【画像】ウサギの〝縄張り争い〟写真はこちら うちでもやって~!と思っちゃう光景、しかもおいしそうです
整列してにらみ合うウサギたち
12月1日、一本のツイートが、タイムライン上を駆け巡りました。パン製造所とみられる場所で撮影された、2枚の画像が添付してあります。 画面左側に写っているのは、ウサギ型の焼き菓子です。こぢんまり、かつ、ずんぐりむっくりとした見た目をしています。横向きに倒した卵を思わせる身体から、ちょこんと生えた小さな耳。顔には茶色くまん丸な瞳ものぞき、愛らしさ満点です。 右側に視線を移すと、同じくウサギをかたどった、別の洋菓子が目に入ります。こちらは打って変わって、しゃがみ込んだ瞬間を再現したリアルな造形です。長く鋭くとがった耳と、ギリシャ彫刻のような表情が、精悍(せいかん)さを醸します。 驚くべきはどちらのお菓子も、手前から奥に向かって、整然と並んでいることです。合戦直前の武者たちよろしく、じっと向かい合っています。そこはかとない緊張感と、どこかユーモラスな雰囲気が混ざり合い、独特の空気を醸すのです。 “今年も兎座で始まった「スギナミノウサギ」VS「シュ兎レン」の縄張り争い。
Xmasに決着が付くまで、うさぎ達の内部抗争は続くのだ”。そんなツイートの文言も、両者のにらみ合いをぐっと盛り上げます。 「ずっと見ていたい」「勝敗が気になる」。そのようにして、ウサギたちの対決の行方を気にする感想が、ツイートに連なりました。
こだわりは「耳の造形」にあり
人々を悶絶させた画像の投稿主は、東京都杉並区に立地する、ベーカリー兎座Lepus(@inabashiro)です。ウサギをテーマとした、様々なパンを取り扱っています。商品が生まれた経緯を、オーナーシェフの東山伊織さんに聞きました。
今回話題を呼んだのは、杉並の名を冠した欧風焼き菓子「スギナミノウサギ」と、クリスマスの直前期に食べられるフルーツケーキ・シュトレンにちなんだ「シュ兎(ト)レン」です。 東山さん自らもウサギ好きであることが、商品コンセプトの由来です。それぞれ、どのような特徴があるのでしょうか。
「スギナミノウサギ」は、知人から紹介されたという焼き型で調理しています。栃木県のブランド卵「御養卵」や鹿児島県産のきび砂糖を使用。北海道産バターを手炊きで焦がし、群馬県産小麦と混ぜることで、濃厚な風味が実現されるそうです。 一方の「シュ兎レン」は、クリスマス前にのみ店頭に並ぶ、名前通りの特製シュトレンです。 以前、フランス東部・アルザス地方で、イースターの際に供されるウサギ型洋菓子「ラパンパスカル」を知った東山さん。パン生産に取り入れたいと、京都の岡崎神社にある「狛うさぎ」イメージの陶器型を、芸術家の友人に作ってもらいました。
シュ兎レンは、5種のお酒・5種のフルーツ・7種のスパイスに加えて、3カ月熟成させたフルーツを生地に練り込んで仕上げます。東山さんがお酒をたしなむことから、趣味と実益を兼ねた逸品として、幅広い客層から支持を集めているそうです。
「こだわっているのは、どちらも耳の造形です。もろく焦げやすいため、一個一個、慎重に型から取り外しています。生産効率は悪いのですが、自分が好きなものだからこそ、可愛い形にしてあげたいと考えてのことです」