指原莉乃、峯岸みなみ、渋谷凪咲、須田亜香里、田中美久……AKB48グループが輩出したバラドルクイーンの系譜

BIG ONE GIRLS Graph No.2
HKT48 田中美久のバラエティ番組への出演が相次いでいる。3月は、7日・14日放送『ホリケンのみんなともだち』(テレビ朝日)、3月10日放送『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(ABEMA)、11日放送『有吉のお金発見 突撃!カネオくん』(NHK総合)、12日放送『あざとくて何が悪いの?』(テレビ朝日系)などに登場。AKB48グループからまた新しいバラエティクイーン誕生の予感が漂っている。
■バラエティに自分の居場所を見つけた指原莉乃 AKB48グループが輩出したバラエティクイーンの最高傑作と言えるのが、元HKT48の指原莉乃だ。指原は自著『逆転力~ピンチを待て~』(2014年)などでも明かしているように、AKB48の研究生として活動がはじまってすぐに「正統派アイドル」の道をあきらめたという。周りから自分のキャラクターをイジられることが多く、グループ内でも「イジられキャラ」の枠が空いていたことに目をつけて自分の居場所を見つけた。同著で指原は「こうなったらもう、私はしゃべるしかないな、と。MC(トーク)を頑張ったほうが、ここで輝く近道だと確信しました」と語っている。
また、AKB48のメンバーだった、峯岸みなみ、高橋みなみも先駆者的な存在である。峯岸は、AKB48のバラエティ班の元祖と呼ばれ、アイドルらしからぬ自虐的な話題もいとわないなど体を張った笑いにのぞんだ。そういったスタイルが評価されたのか、2020年には人気番組『HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル』(Amazonプライム・ビデオ)の女性芸能人のみの出演回『女子メンタル』にも抜てき。共演したゆきぽよから、AKB48時代の恋愛スキャンダルによる“丸坊主謝罪”についてイジられてもそれを笑いに変えるなどし、ファーストサマーウイカ、朝日奈央らを抑えて優勝を果たした。
高橋もそのトーク力を生かしてバラエティ番組で活躍。2009年に情報バラエティ番組『おもいっきりDON!1155』のレギュラーをつとめ、番組内のコーナー「半田健人のDODONPA昭和名曲探訪」で街ブラロケの腕を磨いた。明るい性格も広く認知され、以降は日本テレビ系の昼番組『おもいッきりPON!』『PON!』でレギュラーを担当。VTR時のワイプなどでのリアクションやそこでのコメントのうまさなどでも目を引いた。
■渋谷凪咲のバラエティ力に見取り図・盛山、かまいたち・山内らが脱帽 元SKE48の須田亜香里は、『中居くん決めて!』(TBS系)2020年1月13日放送回で、バラエティ出演の際に「NGがない」とされることについて「『やってみませんか?』と言われたことは、なんでも楽しそうならやっちゃいます」「『NGはない』って自分でいった覚えはない。言われたことをやっているうちに、そう言われるようになった」と発言。
そういった姿勢が現在の“芸風”などにもつながっており、『ニューヨーク恋愛市場』(ABEMA)2021年10月19日放送回では、恋愛経験が浅いことを引き合いに出され、ニューヨーク・屋敷裕政から「べろべろでBARでキスとかしてみたいでしょ」と尋ねられると、「してみたいです」と即答。そういったきわどい話題でも清々しく受け答えできるところが須田のおもしろさで、逆に好感を持たれた。
現役では、NMB48の渋谷凪咲が文句なしのトップだ。見取り図の盛山晋太郎は「凪咲は芸人の後輩としてみている」と早くから一目を置いていた。また筆者が、かまいたち・山内健司にインタビューした際、渋谷の話題になり「(渋谷は)存在自体がバラエティって感じで、ちょっと怖いくらい。凪咲はどの番組でも誰と絡んでもやっていけるじゃないですか。しかも、こちらが話を振ったら欲しい答えをちゃんと返してくれる。『いやいや、今はそっちじゃないねん』ということが凪咲にはないんです」と絶賛していた。
2022年6月25日放送『まっちゃんねる』(フジテレビ系)でおこなわれた女性タレントの大喜利企画「IPPON女子グランプリ」でも渋谷は、優勝候補としてのプレッシャーがかかる中で第2位に健闘。AKB48グループのバラエティクイーンの歴史のなかでも、指原莉乃と肩を並べるほどの成功を収めている。
■TikTokでの思い切りの良い投稿、バラエティ番組でのノリの良さ 田中美久は、彼女たちに続くバラエティアイドルのネクストブレイク最有力候補だ。そんな田中のバラエティ的なセンスを強く感じさせるのがTikTokである。たとえば2023年1月7日投稿「配信の切り忘れには気をつけましょう」では、視聴者に対して毒を吐きまくるライブ配信者が裏では良い人という「配信切り忘れの放送事故」の通常展開とは逆のパターンで笑わせた。また2022年9月26日「変顔とか可愛くするタイプやろって言われるけど」とのコメントとともに投稿された動画では、なんの躊躇もなく白目をむいて表情をゆがませるなどし、田中の思い切りの良さを感じさせた。
『ホリケンのみんなともだち』2023年3月7日放送回の堀内健とのオープニングトークでは、9年前に福岡の番組で共演したとき、「東京へ行くぞ」と抱っこされて泣いてしまったことを告白。「あのときはご迷惑をおかけしました!」「大人になりました」とエピソードトークもうまく織り込んだ。その後も鍋の製造会社を訪問し、職人に積極的に質問したり、トークに大ウケしたり、ノリが良いところを見せた。同番組3月14日放送回では、無水鍋で作られたカレーを前に「絶対おいしいじゃん」とクルッと一周回るリアクションで笑わせたり、炊き立てのご飯を前に「私、お米が苦手なんですよ」と前振りしながら、一口食べた瞬間に美味しさのあまり顔をのけぞらせるような反応を見せて「わざとらしくないか」とツッコミを入れられたりして、その場をとにかく明るくした。そういう陽気な部分も、さまざまなバラエティ番組から声がかかる理由のひとつだろう。
『あざとくて何が悪いの?』では、元カレからもらった時計について恋人の前で「捨てるのもなんかなと思って使ってる」と言ったり、LINEの既読はつけないのにSNSの更新はしている彼氏にイラッとしたり、価値観が違うカップルの女性役を演じた。コメディ系のドラマや映画でもこれからどんどん活躍できそうな、コミカルな芝居を披露した。 書籍『HKT48 10周年スペシャル』(2022年/日経BP)のインタビューで、「20代で私は自分を変えたいって思っているんですよ」「大人の第1歩として“自立した女性”になりたいなって思います」と語っていた田中。その言葉通り、20歳を過ぎてどんどん個性が磨かれ、HKT48のメンバーとしてだけではなく、ひとりのタレントとして自立しつつある。AKB48グループのバラエティクイーンの系譜を継ぐのは、田中美久で間違いないだろう。
田辺ユウキ